銀聯(ぎんれん)という国際ブランドがあります。
世界的にはUnionPay(ユニオンペイ)と呼ばれますが、中国はもちろん日本でも「赤・青・緑」をベースとしたロゴマークを見る機会も多くなりましたね。
今回は、銀聯(UnionPay)の特徴を解説します。
【もくじ】
銀聯(UnionPay)カードとは
銀聯(ぎんれん)は、中国の中央銀行「中国人民銀行」が中心となり、政府主導で2002年に設立された銀行カード連合が運営する決済ブランド。
そんな中国生まれの銀聯は、いわゆる7大国際ブランドの一角となっています。
●VISA(ビザ)
●Mastercard(マスターカード)
●JCB(ジェーシービー)
●American Express(アメリカン・エキスプレス、以下アメックス)
●Diners Club(ダイナースクラブ)
●Discover(ディスカバー)
●銀聯(ぎんれん)※UnionPay(ユニオンペイ)とも
銀聯は7大国際ブランドの中で一番若いブランド
銀聯が設立される前の中国では、銀行をまたいだ現金のやり取りが不便で、利用者にとって使い勝手は良いものではありませんでした。
そこで、銀行同士のネットワークを構築する目的で、中国国内の銀行が共同で中国銀聯を2002年に設立に至ります。
各地域や各金融機関で異なっていた決済システムの基準を統一するために、決済ネットワークを確立されました。
このおかげで銀行同士で銀聯の銀行間決済システムを通じて連携し、同時に銀聯カードが国内外のさまざまな商品・サービスの決済に使えるようになっています。
今ではカード決済以外にも、オンラインショップやe-コマースで商品購入時に利用できるオンライン決済のインフラも担っていますね。
ちなみに2002年設立というのは、7大国際ブランドの中では、一番歴史が浅いニューフェイス的な企業ということになります。
- VISA:1958年9月設立
- Mastercard:1966年12月16日設立
- JCB:1961年1月設立
- アメックス:1850年3月18日設立
- ダイナースクラブ:1950年設立
- Discover:1985年設立
- 銀聯(UnionPay):2002年3月26日設立
銀聯カードの発行枚数は驚異の90億枚超え
銀聯カードの発行枚数は、なんと90億枚を超え世界一発行枚数の多い国際ブランドのカードで、180の国と地域で利用できます。
中国本土を除く67の国・地域でも1億5,000万以上発行されているので驚きです。
加盟店数も5,500万ヵ所以上と、実はVISAやMastercardと同様に世界で最も受け入れネットワークの広い国際ブランドに成長しました。
中国大陸以外の国や地域でも3,000万店を超え、全加盟店の半数以上を誇ります。(2021年3月時点)
国際ブランド | 加盟店数(約) | 世界シェア (決済回数または決済額) |
本社所在地 |
VISA | 5,290万ヵ所以上 | 約50% | アメリカ |
Mastercard | 5,290万ヵ所以上 | 約26% | アメリカ |
JCB | 3,500万ヵ所以上 | 約1% | 日本 |
American Express | 2,330万ヵ所以上(予測値) | 約3% | アメリカ |
Diners Club | 3,210万ヵ所以上 | 約1%未満 | アメリカ |
Discover | 4,400万ヵ所以上 | 約1%未満 | アメリカ |
UnionPay(中国銀聯) | 5,500万ヵ所以上 | 約20% | 中国 |
銀聯のネットワークは、中国以外にも日本、韓国、香港、マカオ、台湾、シンガポール、タイ、マレーシアなどのアジア諸国に加え、今となってはオーストラリア、ニュージーランドなどのオセアニア、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スイスなど欧米諸国にも拡大。
銀聯の世界シェアは20%以上とVISA、Mastercardに次ぐ3位に位置しています。
中国全土でのシェアは90%を超えているといわれ、銀聯カードを保有していない人を見つけるのが難しいくらい浸透し、中国国民にとってはお財布代わり的なカードとなっています。
中国では、支付宝(Alipay /アリペイ)や、微信支付(WeChatPay/ウィーチャットペイ)などの決済サービスも含めてですが、銀聯カードの存在も、日本以上にキャッシュレス化が進んでいる理由といえますね。
銀聯カードが使えるATMは、世界に290万台も設置されており、中国を除く海外では175万台のATMで利用可能です。(2020年8月時点)
2018年12月末時点のデータなので、上記より少し古いですがVISAカードが使えるATMは、200以上の国や地域で世界270万台以上という数なので、ほぼ同等もしくはそれ以上の数字ということになります。
広大な中国全土どこでもATMで現金の引き出せるのは、日本のそれよりも遥かにその有難味が実感できそうです。
無論、海外でもATMで現金を引き出せますし、はたまたデビットカードとして、お買い物ができるので、クレジットカードさながらの働きをしてくれます。
日本国内では、2006年から銀聯ブランドのカード発⾏を開始し、大手銀行と提携したクレジットカード・デビットカード・プリペイドカードの決済サービスを提供しています。
日本では銀聯カードを使える店舗は、まだまだ多いとは言えませんが、少し前に「爆買い」というキーワードを良く見かけたように、それでも110万店の銀聯の加盟店が日本国内に点在しています。
銀聯カードを使えるATMも日本で全国8万台に対応しており、中国人観光客が多い都市を中心に、金融機関各社、コンビニなどで着々と対応して増えていっています。(2020年12月末時点)
銀聯カードの大半はデビットカード
銀聯(UnionPay)のマークがついたカードは、中国では、その大多数がデビットカードです。(約8割)
中国の銀行でキャッシュカードを発行すると、銀聯のデビットカード機能が付帯します。
これが、中国国内で90億枚という驚異的な発行枚数となっている主なカラクリ。
大きな違いは決済方法です。デビットカードは即日決済ですが、クレジットカードは翌月決済です。
2回払いはもちろん、カード会社によっては分割払いで何十回にも分割して支払えたり、リボ払い(事前設定した金額で毎月支払う方法)でも決済できます。
銀聯カードが中国で急激に増えた理由とは?
銀聯ブランドは、設立が2002年と他の国際ブランドと比べると最も歴史が浅いにもかかわらず、カードが爆発的に普及したのには、主に以下のような3つの理由があります。
【2】海外に持ち出せる現金に制限がある
【3】貧富の差が激しくクレジットカードが普及しなかった
【理由1】多額の紙幣を持ち歩く必要がなくなる
中国の最高額の紙幣は100元(日本円で約1,700円)です。
高額紙幣を持ち歩くとスリや盗難といったリスクがつきまといます。
また、かつてニセ札が出回ることも少なくなかったので、利用者はもちろん店側も含めてスムーズかつ安全に決済のやり取りができる手段として、銀聯カードが中国で普及した理由の一つとなっています。
【理由2】海外に持ち出せる現金に制限がある
中国人が旅行や出張などで海外に渡航する際は、申告なしで国外に持ち出せる現金の上限額は、人民元2万元(約33万円)、または5,000ドル相当(約55万円)の外貨といった制約があります。
一般庶民や貧乏旅行を楽しめる中国人なら問題ない額かもしれませんが、中国人の富裕層にとっては、この制限は不便極まりありません。
それこそ少し前まで日本でも中国人による「爆買い」という言葉をよく耳にしましたが、上記のような制限があると、すぐに上限に達してしまうわけですね。
無論、与信審査に通るような富裕層や地位の人なら、そもそもVISAやMastercardなどの他の国際ブランドのクレジットカードを持てばいいという話もありますが。
その一方で、銀聯カードによるATMでの年間の現金引き出し上限額は、1人あたり最高10万元(約165万円)です。
海外旅行などの際、銀聯カードは現金以上に利便性が高く、これも多くの中国人に支持されている理由となっています。
【理由3】貧富の差が激しくクレジットカードが普及しなかった
中国といえば現在、世界第2位の経済大国です。
ただ、ご存知の方も多いと思いますが意外にも先進国ではないんですよね。
世界の中では、発展途上国として見なされています。
その理由として、中国では依然として貧富の差が激しく、あくまで一部の富裕層がGDPを引上げているだけという背景があります。
したがって、今もなお貧困層が多いので、生活水準は低いとされているんです。
このような事情で経済大国ながらも、発展途上国という矛盾した位置づけとなっています。
貧困層が多いということは、クレジットカードで必要な与信審査に通る国民が少ないということ。
日本だとクレジットカード発行時は「その人が今まで遅延・滞納などの事故などなく、ちゃんと支払いを行ってきたかどうか」を判断する与信審査がありますね。
中国では、この与信審査システムが日本ほど出来上がっていないということも、与信が不要なデビットカードが広まっているという理由の一つとなっています。
これらの理由が、クレジットカードではなく、ほとんどが「キャッシュカード兼デビットカード」ということに繋がります。
銀聯カードは、銀行のキャッシュカードを兼ねたデビットカードということなので、中国国内の銀行口座を作れば、自動的に発行されるカード。
それが、先述したように中国国内で90億枚という爆発的に増えた発行枚数のカラクリであり、中国国民には必需品的な使い勝手の良いカードとなっているわけ。
中国国内では口座に残金がある限りつかえるので、わずか数十元(日本円で100円程度)でも銀聯カードを利用できるので、便利なのは当然ですね。
中国ではVISAやMastercardでさえも使えないお店も
中国国内では、銀聯以外の国際ブランドのカードが使えないケースも少なくありません。
世界での加盟店の数で1位・2位を争うVISAとMastercardさえも、中国では使えないお店があることを考えれば銀聯カードをあらかじめ用意しておくと安心です。
都市部ならまだ、他の国際ブランドに対応している店舗もありますが、地方に行けば行くほど銀聯しか使えなくなる傾向があります。
そのため日本人が中国に旅行や出張に行くなら、できれば「VISA+銀聯」か「Mastercard+銀聯」の2枚持ちで渡航するのが理想です。
<関連記事> 日本で発行できる銀聯(UnionPay)クレジットカード・プリペイドカード・デビットカード全種類を解説
アジア諸国での優待特典・サービスあり
銀聯カードホルダー向けに、近年ではアジア各国で受けられる優待が増えています。
たとえば、シンガポールなら人気観光地のセントーサ島の「マーライオン公園」の入場料が15%OFF、世界一高い観覧車の中で食事ができると人気の「スカイダイニング」で銀聯カードを使ってオンライン予約すると食事代が15%OFFになり、さらに優先的に入店できます。
これは2018年の中国銀聯の小会社である「銀聯国際」の調査によるものですが、シンガポールで7万円利用した場合、すべて現金で決済する場合と、すべて銀聯カードで決済する場合を比較すると、後者が6,221円も安くなったのだとか。
中国系資本が進出している国や地域では、今後、銀聯カードを利用した際の優待サービが増えていくことが期待できそうです。
中国のみならず、アジア諸国への旅行によく行く方にとっては、銀聯カードは一定のメリットのあるといっていいでしょう。
<関連記事> 日本で発行できる銀聯(UnionPay)クレジットカード・プリペイドカード・デビットカード全種類を解説
日本でも銀聯が使えるお店が続々
日本でも三井住友カードや三菱UFJニコスなどのカード会社が加盟店を開拓しているため、銀聯ブランドが利用可能なお店はどんどん増えています。
たとえば・・・
ローソン、セブンイレブンなどのコンビニ、イオン、イトーヨカドーなどのスーパー、高島屋や大丸松坂屋などの百貨店、ビックカメラやヨドバシカメラなどの家電量販店、成田・羽田・関空・中部といった国内主要空港etc.
と言った、あらゆるジャンルの店舗で着実に導入が進んでいます。
個人店でも都内など中国人観光客が多い地域では、Alipay(アリペイ)やWeChatPay(ウィーチャットペイ)と同様に続々と銀聯の加盟店が増えています。
<関連記事>銀聯(UnionPay)カードが使える日本の加盟店と優待特典・サービスを解説
銀聯QRコード決済
銀聯が提供する「銀聯QRコード決済」は、世界中の約3,000万店舗で利用できます。(2021年3月時点)
日本人には、まだ銀聯QRコード決済はあまり知られていませんが、中国人をはじめ多くの訪日外国人にとって、すでに馴染みのあるモバイル決済の一つです。
日本での銀聯カード決済の導入率は7割を超え、そのうち約6万店の店舗が銀聯QRコード決済サービスを導入しています。
たとえば、羽田空港の免税店やロフトなどの有名店舗で既に導入済みです。
また、UnionPayアプリや海外13の国と地域の53のウォレット事業者は、すでに国境を越えてユーザーに、QRコード決済サービスの提供を開始しており、その利用者数は約2.5億人に達しています。
このようなユーザーが今後は、旅行中にJPQR(日本政府主導の統一QRコード)をスキャンして簡単に決済できるようになります。
現在、銀聯の決済ネットワークは180の国と地域に拡大しているということでした。
利用者の決済習慣の変化に応じて銀聯国際はモバイル決済サービスの普及を加速させ、銀聯QRコード決済のアクセプタンスは、すでにアジア太平洋、中東、北米の37の国と地域に広がっています。
タイ、シンガポールなどでも、銀聯国際は業界団体と協力し、共通QRコード規格の策定に参加済みです。
非接触決済QuickPass(クイックパス)
非接触IC決済の「QuickPass(クイックパス/閃付)」は、世界中の約2,500万店舗で利用可能です。(2021年3月時点)
QuickPassは、先程の銀聯QRコード決済とならんで、すでに中国で広く利用されています。
中国本土だけでなく、香港、マカオ、台湾、シンガポール、オーストラリア、アラブ首長国連邦、ロシア、ギリシャなど10以上の国と地域でも導入店舗で使用できます。
2017年には、銀聯が30以上の銀行、決済機構などと共同で銀行業界統一のモバイル決済アプリのMobile QuickPass(雲閃付)もリリースしました。
したがって、QuickPass機能付きの銀聯カードならNFC搭載のスマホにて専用アプリと連携してスマホでのQuickPass決済も可能です。
2020年8月10日には、利用者数が早くも3億人を突破したことを公表しています。
日本では、三井住友カードとNTTデータの2社により、東急不動産、東急不動産SCマネジメントが運営する、東急プラザ銀座において2017年12月1日からQuickPass(クイックパス)の取り扱いを日本で初めて開始しました。
2018年4月9日には、松屋銀座店でもQuickPass(クイックパス)の取り扱いを開始しています。
ただ、日本ではWeChatPay(微信支付)、AliPay(支付宝)は以前より中国人観光客の多い都市部を中心に普及してはいるものQuickPassの導入は、まだまだこれからといったところです。
さいごに
銀聯(UnionPay)は、7大国際ブランドの中では、2002年設立と最も新しい企業ながらも発行枚数は、90億枚を超えています。(2021年3月時点)
2021年3月時点からみて数年後には、100億枚を突破してしまう可能性もあるぐらい勢いのある決済ブランドです。
中国での現金決済は10%になるほどにまでキャッシングレス化が進んでいます。
そんな中国社会の決済の中心的な役割を担っているのが銀聯(UnionPay)です。
今は、中国以外の国や地域でもその規模を拡大しています。
中国人にとって銀聯カードは、メリット三昧で、デメリットは皆無といっても良いかも知れませんね。
★中国国内なら、どこでも銀聯カードでお買い物が可能
★中国全土どの銀行でもATMで引き出しが可能
e=”color: #ff9900;”>★海外の対応ATMでも現地通貨として現金の引き出しが可能
★海外でもデビットカードとしてショッピングが可能
★持ち出し制限を気にせず、海外でお買い物を楽しめる
日本国内でも三井住友カードや三菱UFJニコスを通して手軽に銀聯カードを作ることが可能です。
国内の銀聯加盟店も着々と増加しており、VISAやMastercardなどと並ぶ国際ブランドとしての地位を固めつつあります。
発祥国の中国でも爆発的に普及しているので、中国に旅行や出張、留学などの機会があれば、一枚あれば非常に頼もしい相棒になるハズです。
<関連記事> 日本で発行できる銀聯(UnionPay)クレジットカード・プリペイドカード・デビットカード全種類を解説