Discover(ディスカバー)というクレジットカードの国際ブランドがあります。
オレンジ色のロゴカラーがトレードマークの決済ブランドの一つです。
とはいえ、VISAやMastercard、JCBと比較すると日本人には、まだまだ馴染みが薄い国際ブランド。
今回は、まだまだ日本では認知度が低いディスカバーカードの特徴をはじめ、メリット・デメリットについて解説します。
【もくじ】
Discover(ディスカバー)とは
ディスカバーカードは、アメリカ生まれのクレジットカードです。
現在はディスカバー・ファイナンシャル・サービスによって発行され、分類上は銀行系カードとなります。
メジャーな「国際ブランド」は、
- VISA(ビザ)
- Mastercard(マスターカード)
- JCB(ジェーシービー)
- American Express(アメリカン・エキスプレス、以下アメックス)
- Diners Club(ダイナースクラブ)
で、5大国際ブランドと呼ばれたりしています。
ただ近年では、以下の国際ブランドも加えて7大国際ブランドと呼ばれたるすることも増えました。
- Discover(ディスカバー)
- 銀聯(ぎんれん)※UnionPay(ユニオンペイ)とも
無論、「国際ブランド」と呼ばれる以上は、発行される国だけでなく、世界中で利用できないと国際ブランドとは呼べません。
そのためディスカバーカードも、発行国の本場アメリカをはじめ世界各地で使える決済ブランドということなのですが、日本では、現時点では発行されていないこともあってか、他の主要国際ブランドと比べれば認知度は低めです。(2021年3月時点)
ディスカバーカードの細かな歴史については最後にまとめています。
ディスカバーカードのメリット
提携が多く利用可能な国・地域が広い
日本では発行していないということもあり、アメリカやカナダなどに住んでいる外国人のディスカバーカードホルダー視点でのメリットとなってしまいますが、多くのカード会社との連携があるため、国際ブランドとして世界中で広く利用できます。
ディスカバーは、世界シェア(決済回数または決済額)こそ高くはありませんが、加盟店数は、意外にも日本人にも馴染みのあるアメックスやダイナースクラブより多くなっています。
国際ブランド | 加盟店数(約) | 世界シェア (決済回数または決済額) |
本社所在地 |
VISA | 5,290万ヵ所以上 | 約50% | アメリカ |
Mastercard | 5,290万ヵ所以上 | 約26% | アメリカ |
JCB | 3,500万ヵ所以上 | 約1% | 日本 |
American Express | 2,330万ヵ所以上(予測値) | 約3% | アメリカ |
Diners Club | 3,210万ヵ所以上 | 約1%未満 | アメリカ |
Discover | 4,400万ヵ所以上 | 約1%未満 | アメリカ |
UnionPay(中国銀聯) | 5,200万ヵ所以上 | 約20% | 中国 |
※JCBは公式サイトでの2020年9月末日時点のデータ。UnionPayは2021年3月時点でのデータ。それ以外は2018年度のNilson Report(ニルソンレポート)による。
ディスカバーカードのメイン会員は、北米、カナダですが、そこから中米、東南アジア、オセアニアなどに広がります。
少し古いですが2006年にJCBが発表したニュースリリースでは、会員数は5,000万人だったので、今はもっと増えている可能性が高いです。
ディスカバーカードは年会費無料
ディスカバーカードには、いくつか数種類ありますが、すべてが年会費無料です。
それもあり発祥地アメリカやカナダをメインに人気の国際ブランドの一つとなっており、世界各国で利用されています。
利用限度額が高め
ディスカバーカードは、他のクレジットカードと比べて利用可能枠が高めに設定される利点があります。
通常、年会費無料カードを含めたスタンダードなカードといえば、ゴールドカード以上の上位カードと比べれば低めに設定されることが多いです。
いずれにしても利用顧客の属性や、年収、利用実績などに応じて限度額を設定するというものが一般的ですが、ディスカバーカードだと、一律に利用限度額が高めに設定されるという長所があります。
これについては、ディスカバーカードが事業を開始した当時に、VISAとMastercardに対応しての一種の戦略と考えられます。
高還元キャッシュバックあり
日本のクレジットカードなら、利用金額に応じてポイントが貯まるケースがほとんどですが、ディスカバーカードの場合、キャッシュバックという形で付与されます。
キャッシュバック特典つきのカード意外にも、マイルを貯めやすいトラベルカード、学生向けカードなど、幅広いラインナップがあります。
年会費無料で、ポイント還元率の高いカードが多数あるのが魅力です。
一例として「ディスカバー・イットカード」では、年会費無料なのはもちろん、通常1%のキャッシュバック特典あります。
レストラン、スーパー、Amazon、ガソリンスタンドなど一部店舗では四半期ごとに最大5%のボーナスキャッシュバックも行っています。
ディスカバーカードの学生向けカードは、海外の留学生も作りやすいカードです。
申し込み後の審査が早く、スピード発行が可能で、成績が良ければ年間20ドルのステートメントクレジットも取得できます。
さらに利用金額に応じて5%のキャッシュバックも。
ディスカバーカードのデメリット
ディスカバーカードは日本で発行不可能
ディスカバーカードは、現時点では日本では発行できません。
ディスカバーカードが欲しい場合は、約5,000万人が保有しているとされる本場アメリカや、ディスカバーカードを発行しているカナダや東南アジアに一定期間居住しないと発行させてもらえません。
ディスカバーカードを発行している国・地域に居住している人しか作れないので、日本では発行不可能で、現在の日本国内では保有できない国際ブランドのクレジットカードです。
前述のとおり、外国人トラベラーが日本でディスカバーカードを利用する場合は、JCB、ダイナースクラブ、銀聯(UnionPay)加盟店で利用できます。
いずれにせよ日本では作れないということですが、流石にクレジットカードを作るために海外移住というのは現実的ではありません。
日本でもディスカバーカードが発行される日がこれば良いのですがね。
日本では、まだこれからな国際ブランド
北米をはじめ海外では思いの外、人気の高いディスカバーカードですが、日本では発行できないため、国内ではまだまだ馴染みがありません。
日本では、まだまだ普及してはいないものの国内主要都市を中心に、ディスカバー提携カードの加盟店が増え、外国人トラベラーが便利に使えるお店は着々と増えていっています。
そのため、現状は日本国・日本人目線からみると、どちらかと言えば、旅行など訪日外国人向けのインバウンド的な要素が強い国際ブランドと言えますね。
海外発行のクレジットカード会社と日本で使えるクレジットカードが提携を結んでいない場合は、そのクレジットカードは利用不可能です。
ただ、中国を中心に普及している「銀聯(ぎんれん)※」や、後に日本で唯一の国際ブランド「JCB」との加盟店開放契約を結んでいるため、銀聯の加盟店およびJCB加盟店でもディスカバーカードを利用できます。
※銀聯は世界的には「UnionPay(ユニオンペイ)」と呼ばれます。
つまり、ディスカバーカード加盟店と双方の加盟店、どちらでもそれぞれ利用可能ということ。
日本に来ているディスカバーカードホルダーの外国人が、JCB加盟店でお買い物が楽しめるといったイメージです。
JCBのATMネットワークでは、日本円の引き出しもできます。
また、JCBカードホルダーも基本的にディスカバー加盟店でショッピングが可能です。
たとえば、アメリカへの旅行や出張時に、飲食店、スーパー、ガソリンスタンドなどの一部店舗を除くディスカバー加盟店でカード決済できるといった具合。
さらに2008年4月にディスカバー・ファイナンシャル・サービスは、ダイナースクラブを買収して傘下に収めたので、ダイナースクラブ加盟店でも使えます。
そのため逆に「ダイナースクラブカード」保有者は、ディスカバー加盟店で利用可能です。
また、身近なところで言うと、国内でも2020年4月から、JCBカードではJRの6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)の駅窓口と券売機の切符購入でディスカバーカードを使えるようになっています。(参考)
ディスカバーカードは、日本では、他の主要国際ブランドと比べると、まだまだ馴染みがありませんでしたが、上記の事情もあり徐々に認知されるようになってはいます。
Discoverは、世界的には人気なので、日本でも今後、期待できる国際ブランドのクレジットカードと言えます。
ディスカバーカードの歴史
1985年にアメリカ小売大手の百貨店企業である「シアーズ」が母体となりDiscoverカードを設立。
1985年設立のディスカバーは、2002年設立の銀聯に次いで2番目に新しい国際ブランドです。
VISAやMastercard、JCBなどの他の国際ブランドが50年以上の歴史があることと比べると、まだ歴史が浅い決済ブランドといえます。
ディスカバーは、当初、VISAやMastercard、アメックスといった主要国際ブランドとは提携しない独自方針を貫いていました。
この事情から当時は、アメリカ、カナダにあるシアーズや北米発の小売業者という小規模な展開に過ぎず、他のデパートや店舗では基本的に使えなかったこともあり、ディスカバーカードの使い勝手はお世辞にも高いとは言えなかったようです。
ただ、その予想を反し発行枚数は、急速に伸びていきました。
その理由として先程のメリットの章でも解説しましたが、主に下記の3つが挙げられます。
- 年会費無料
- 高額な利用限度額
- お得なキャッシュバック
今でこそ年会費無料カードは、いくらでもあり、キャッシュバックなどの特典も当たり前となっていますが、当時としては目新しいサービスだったわけです。
前述のとおりディスカバーは、他の国際ブランドと比べそれほど運営歴は長くないので、競合他社に対抗するために「年会費無料」「高額な利用限度額」「キャッシュバック」という当時としては、斬新なサービスが生まれたと考えていいでしょう。
あとは、アメリカ4大スポーツの中で、最も人気のあるアメリカンフットボール(NFL)で、1986年の「第20回スーパーボウル」のCMで鮮烈なデビューを果たしたことも大きいと言えます。
ディスカバーカードの創設者であるディスカバーカード初代社長のレイモンド・ケネディ・シニア(Raymond Kennedy, Sr.)のCM戦略により、クレジットカード業界のニューフェイスであるディスカバーカードが一夜にして多くの人に知られることになったのですから。
そのCM料は、なんと30秒で4億円とケタ外れ。スーパーボウルのCM枠を確保することは極めて難しいことなのです。
ただ、後にシアーズは「ウォルマート」や「トイザらス」などとの競争にさらされた結果、1993年にディスカバーカードを「ディーン・ウィッター・ファイナンシャル・サービス」という企業に売却。
更に、ディーン・ウィッター・ファイナンシャル・サービスが世界的金融グループのモルガンスタンレーに吸収合併されたことで、ディスカバーカードは、「ディスカバー・ファイナンシャル・サービス」に名称を変えてカード事業を展開しています。
これを機にディスカバーカードは、大きく方針転換することになります。
1997年にシアーズは、「Discover」ブランドおよびDiscoverを管轄する事業をアメリカ金融グループ大手「モルガン・スタンレー」に売却。
この頃はシアーズの業績に陰りがみえはじめ、業績回復に向け、やむを得ずディスカバーを売却することになりました。
シアーズから離脱したディスカバーは、結果としてシアーズ以外でも使えるお舗が増え続け、アメリカでのシェアがVISAとMastercardに次ぐ3位になるまでの急成長を遂げました。
ちなみに今ではモルガン・スタンレーからも離脱しており、自社の持株会社「ディスカバー・ファイナンシャル・グループ」が運営しています。
上記のような紆余曲折を経て、ディスカバーカードは、2005年5月に国際ブランドの仲間入りを果たしたわけです。
国際カードとしての路線に切り替えたことで、2005年5月に、中国の中国銀聯(China UnionPay)と加盟店を相互開放し、利用できる国・地域を拡大していきます。
中国でそれなりに知れ渡ると、UnionPayの加盟店があるシンガポール、タイ、韓国でも使えるようになり、他にもメキシコ、コスタ・リカ、ミクロネシア、マーシャル諸島などにも広がりを見せ、徐々に人気を高めていきました。
2006年には、JCBとも加盟店、ATMネットワークの相互開放を果たし、2008年には日本、台湾、グアムでも使えるようになっています。
2008年4月、ディスカバー・ファイナンシャル・サービスは、シティグループ傘下のダイナースクラブ・インターナショナルを買収したことを機に、ディスカバーとダイナースクラブ間の双方の加盟店における相互利用も可能になっています。
2011年8月には「JCB」と「Citibank,N.A.」が加盟店のライセンス契約を結んだことで、香港、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアでも利用できるようになるなど、アジア・オセアニアにおける利用範囲を大きく拡大しました。
さらにJCBとの提携で、スペイン、ブルガリア、ベネルクス、エジプトと広がりをみせ、世界的には今や主要国際ブランドの仲間入りを果たしています。
さいごに
アメリカ生まれのディスカバーカードは、世界的には人気の「国際ブランド」です。
Discoverブランドのカードは、アメリカ、カナダ、東南アジアなどの海外在住の方しか作れないので日本で発行できませんが、JCB、ダイナースクラブ、銀聯(UnionPay)の加盟店なら利用可能です。
「年会費無料」「高めな利用限度額」「キャッシュバック」そして何より他のクレジットカードとの連携も多く世界中で使えるのが魅力。
たとえば、ディスカバーの学生向けカードは、海外留学生が使いやすく、キャッシュバック特典やグッドグレード報酬などの学生向け優待もあります。
日本人からすると、まだまだ未知数ですが、今後が楽しみな国際ブランドと言えます。